第3回「豊かな暮らし」のために検診、歯みがきも

限られた空間で動物の豊かなくらしを目指す———。大牟田市動物園の飼育係全員で挑戦しているテーマだそうです。この考えは、レッサーパンダの採血やエコーの検診、歯みがきなどの健康管理にもつながっています。

—レッサーパンダがボルダリングをする姿にはおどろきました。
河野さん たしかにレッサーパンダではめずらしいですが、チンパンジーなどでは他の動物園でも取り入れているようですよ。大牟田市動物園では、飼育施設の環境を工夫するだけでなく、トレーニングで健康を管理することにも力を入れています。
—例えばどんなことでしょう。
河野さん レッサーパンダでは、体重測定、採血、体温測定、聴診、血圧測定、エコー検査、レントゲン撮影。口あけてのブラッシング(歯みがき)もしています。

(動画は大牟田市動物園提供)

—どこか悪いのですか?
河野さん 採血も検温も定期的な予防の検査で、体調が悪いからやっているのではありません。血液や体温の正常な値を把握していれば、動物の状態がいつもと違うときに数値を比較して治療へとつなげられます。ブラッシングは、口の中の状態を調べるためですね。動物園で過去に歯周病になったレッサーパンダがいました。歯にものがつまっていれば取れるように、口をあけてもらってブラッシングができるようにしています。
—レッサーパンダの歯みがきですか…。口をどのようにあけてもらうのでしょうか。
河野さん レッサーパンダに協力してもらって検査をするためにトレーニングを続けてきました。まずえさを見せて、口を開ける行動を引き出します。口を開けることできたら、その行動で「オッケー」という合図の笛を吹き、リンゴを与えます。そして歯ブラシを一緒に見せて、徐々に歯ブラシが口を開けるサインだと覚えてもらいます。この学習を4か月ほどくり返すことで、ブラッシングをさせてもらえるようになりました。

(動画は大牟田市動物園提供)

—トレーニングで覚えてもらうのですね。
河野さん 採血のための麻酔や、検査のために一時的におさえつけることは、動物の体の負担やストレスにつながる可能性があります。大牟田市動物園では2014年から、動物に負担をかけずに健康を管理するトレーニングを導入しています。これをハズバンダリートレーニングと呼びます。飼育係全員がトレーニング用の笛を持っていて、ライオンやキリンでは採血するようすをお客さんに見てもらっています。
—レッサーパンダのトレーニングは難しくありませんか。
河野さん 僕はもともと岡山県にある池田動物園の飼育係として働いていました。そこで先輩からキリンのハズバンダリートレーニングについて勉強をさせてもらいました。今もキリンを担当してトレーニングをしています。レッサーパンダは大好物のリンゴを使ってトレーニングをしていますが、集中力が高い印象がありますね。

(「第4回 赤ちゃんの死を未来の子育てにつなげたい」に続きます。データなどは記事公開時点の情報です。)

河野さんのプロフィール

1991年12月21日、山口県下関市生まれ。山口県立農業高等学校から福岡ECOコミュニケーション専門学校(現:福岡ECO動物海洋専門学校)へ進学。2011年11月に岡山市の池田動物園に就職。2014年8月から大牟田市動物園へ。現在はキリン、レッサーパンダ、オオカンガルー、カピバラ、ケヅメリクガメなどを担当。動物の行動に関する研究やトレーニングによって得られるデータを活用できる研究などにも力を入れる。趣味は動物園巡り。子どもの頃の夢は牧場で働くこと。

福岡・大牟田市動物園

大牟田市に戦前の1941年開園しました。92年度には40万人を超えた来園者数もその後右肩下がりとなり、2000年代には13万人台まで減り、閉園が検討されたこともありました。近年は「動物福祉を伝える動物園」というポリシーの下、動物の豊かな暮らしを実現するための工夫が話題になり、17年度は入園者数が24万人を超えるまでのV字回復を果たしています。

所在地: 〒836-0871 福岡県大牟田市昭和町163番地
電話: 0944-56-4526
FAX: 0944-56-9551
メール: zoo@jupiter.ocn.ne.jp
ホームページ: http://www.omutazoo.org

福岡・大牟田市動物園

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ハピズーでは、大牟田市動物園とコラボして、飼育されているレッサーパンダをモデルにしたグッズを制作しました。大牟田市動物園で販売し、売り上げの一部は動物たちの飼育に役立てられます。

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