第1回母ゾウとはぐれた孤児のボルネオゾウ

推定6歳のふくちゃん =福山市立動物園提供

推定6歳のふくちゃん =福山市立動物園提供

 17年前、1頭の小さなゾウが日本にやってきました。福山市の人たちが待ちわびたゾウ、ふくちゃんの来園です。アジアゾウの亜種「マレーゾウ」として来園しましたが、のちに「ボルネオゾウ」だとわかりました。当時の状況を振り返ります。

ボルネオからやってきた小さなゾウ

 ふくちゃんが福山市立動物園にやってきたのは、2001年4月28日のことです。推定3歳。体高約1・5メートル、体重約500キロ。正確な誕生日がわからないため、毎年4月28日を「誕生日」として年を重ねることになっています。18年に20歳を迎えたふくちゃんは、体高約2・3メートル、体重約2・5トン(2500キロ)まで大きくなりました。

来園したばかりのふくちゃん、推定3歳=2001年、福山市立動物園提供

来園したばかりのふくちゃん、推定3歳=2001年、福山市立動物園提供

 福山市立動物園は、私立の動物園を引き継いで1978年にできた動物園です。当時、インドゾウ「トミ子」が飼育されていましたが、94年に推定32歳で死にました。動物園は95年に動物購入基金を設置し、人気者のゾウの導入の検討を続けてきた結果、マレーシアからふくちゃんがやってきました。

 ゾウは野生ではメスを中心とした群れの社会です。ふくちゃんもボルネオでは群れで母ゾウと暮らしていたと考えられますが、何らかの理由でそこからはぐれてしまったようです。孤児のゾウになった経緯はわかっていません。ただ、ボルネオではゾウが人々に愛される一方で、油ヤシ農園の開発によりゾウが「害獣」として扱われ、銃や毒で殺すという痛ましい事件も起きています。

 朝日新聞は、ふくちゃんが来園した3日後の2001年5月1日の広島県版の紙面で「マレーゾウ 3日から公開」と小さな記事を掲載しています。記事によると、関西空港から6時間かけて陸路で運ばれ、ゾウ舎では飼育係がつきっきりで世話をしました。同年5月3日に行われた歓迎セレモニーのようすは、地元の中国新聞が翌日5月4日の福山地方版で「アイドルがまた増えたゾウ」という見出しで伝えています。ゾウの導入を待ちわびていた家族連れらがゾウ舎の前に長い列をつくったそうです。

ふくちゃんの来園を伝える朝日新聞2001年5月1日朝刊広島県版(左)と中国新聞5月4日付福山地方版

ふくちゃんの来園を伝える朝日新聞2001年5月1日朝刊広島県版(左)と中国新聞5月4日付福山地方版

 読売新聞2003年4月19日広島県版に掲載された当時の園長のインタビューによると、ふくちゃんが来園してからお客さんは35%増加。ゾウ舎ではゾウが掘に転落しないように堀の手前に柵を設ける一方、堀の幅を一般的な7メートルから3メートルに狭める工夫をしたという話が紹介されています。

 動物園はふくちゃん のペアとなるオスのゾウも導入する計画でした。しかし、ふくちゃん来園後にボルネオでの状況が一変します。ボルネオゾウが生息するサバ州政府の方針で保護のために搬送が禁じられたことにより、オスの導入は実現しませんでした。

新しい研究でボルネオゾウと判明

 2003年、ボルネオ島北東部のみに生息するゾウはDNA検査によってアジアゾウの亜種という研究成果が発表されました。ボルネオゾウには他のアジアゾウと比べて①体が小さい②鼻が短い③尾が長いなどの特徴があり、ふくちゃんの体型も酷似していました。動物園はふくちゃんをアジアゾウの亜種「マレーゾウ」として紹介していましたが、この研究の発表後から「ボルネオゾウ」として報告するようになりました。

ふくちゃんのふるさと、ボルネオの森=認定NPO法人ボルネオ保全トラスト・ジャパン提供

ふくちゃんのふるさと、ボルネオの森=認定NPO法人ボルネオ保全トラスト・ジャパン提供

 さて、話をふくちゃんの来園時の2001年に戻します。ボルネオからやってきたふくちゃんは、人の手による世話に慣れていないゾウでした。「日本で初めての『真の野生のゾウ』でしたから、小さくても触ることすらできませんでした」。こう振り返るのは、来園時から世話をしてきた獣医師の向井 康彦(むかい・やすひこ)さんです。
(第2回「絶対に死なせない」と誓った」に続きます)

広島・福山市立動物園

1978年に福山市が私立動物園を引き継ぎ開園した動物園です。緑の木々など四季折々の自然環境に恵まれた丘陵に位置しています。 大きな動物園ではありませんが、動物との距離が近く、動物の息遣い、匂い、表情等が間近で感じ取れる動物園として多くのお客様に親しまれています。

所在地: 〒720-1264 広島県福山市芦田町福田276−1
電話: 084-958-3200
FAX: 084-958-3022
ホームページ: http://www.fukuyamazoo.jp/

広島・福山市立動物園

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ハピズーでは、福山市立動物園とふくちゃんの結核の闘病を支えるためのクラウドファンディングを2018年9月〜11月に実施。結核の検査キット、暮らしを豊かにするエンリッチメントアイテム、機械式ミストの設置などが目的です。

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